コラム 考えるツボ

あなたは仕事をしている中で、「なんて頭の回転が速い人だろう」「どうしてあんなにアドリブが利くのだろう?」と、思うような人に出会ったことはありませんか?

メガネをかけたコアラ

データや実体験も無さそうなのに、自分の意見を瞬時に答えられたり、予想外の質問を受けても、的確な回答ができたり・・・

そういった人は地頭(じあたま)が良いなんて表現もされますが、そのような言葉を使われると、まるで「生まれついての才能」のように聞こえます。
しかし、それは決して天性の才能ではなく、日々の過ごし方によって、誰でも身につけることができるものなんです。

今回の記事では、そんな、どの業界にも必ずいる「頭の回転が速い人」「アドリブ力がある人」の頭脳の謎を紐解いていこうと思います。

テレテレテレテレテレテレテレテレテ~~~♪
※『世界・ふ○ぎ発見!』のテーマで

頭の回転が速いのは、知識の量ではなく考える力があるから

いわゆる「頭の回転が速い人」に共通する点として、本をたくさん読んでいたり、専門的な勉強を欠かさないという印象があります。

書籍のイメージ

たしかに、そういった「知識の多さ」も、重要な要素なのですが、実は直接的には「頭の回転の速さ」とは関係がありません。

なぜなら、知識や情報だけをインプットし続けても、それは暗記に近く、冒頭で述べたような想定外の質問や、データ・経験のない質問に対しては、暗記した情報の中に、類似ケースがなければ、回答することができないからです。

例えるなら、「パソコンを使って、イラスト画像をひたすらコピーペーストし続けても、“自分でイラストを描くスキル”は上達しない」のと同じです。

では、頭の回転の速さが、知識の量で決まらないのであれば、何で決まるかというと、それは「考える力」です。

「考える力」を身につけるにはどうすればよいのか?

「考える」という言葉は、色々な使われ方をしてしまうので、ややこしいのですが、

明日、映画に行こうかカラオケに行こうか考えている。

といった、「迷っている・悩んでいる」という意味で使われる「考える」とはもちろん別物です。

ここでいう「考える力」とは、世の中の出来事や仕事の問題の解決方法を、自分なりに想像したり、推測する力のことです。
(カッコイイ言葉を使えば「論理的思考力」と言われますが、この記事では「考える力」として進めていきます)

この「考える力」が高まっていくと、「先見性」「洞察力」など、様々な呼ばれ方をするようになるのですが、実は、考える力は筋肉と同様に、普段からトレーニングをしておかないと、決して向上することはありません。

考え中

そして、「考えるトレーニング」は、ハタから見ても「ボケっとしている」ようにしか見えず、筋トレのように、ジムに行くということも出来ません。

そのため、「考えることをトレーニングしているか」は、他人からはなかなか判断できず、「あの人は頭の回転が速くて賢い」という結果だけが、まるで天性の才能のように見えてしまうんです。

思考トレーニングの具体例

では、具体的にどのような思考のトレーニングをすれば、考える力はアップするのでしょうか?
それは、

  • 答えが無い問題を考えること
  • 答えが複数ある(であろう)問題を考えること
  • 答えがすぐに判明しない問題を考えること

といった、基本的に、答えが定かでない問題を考えるというトレーニングです。

「答えの無い問題」なんて聞くと、「日本の景気を良くするためにはどうすべきか?」みたいな、小難しい問題を思いつくかもしれませんが、実は、もっと身近なことでも良いんです。

例えば、あなたがよく行くお店で、「このカフェは、とても忙しくて大変そうなのに、なぜあの女性は働き続けているのか?」などでも構いません。

カフェで働く女性

その問題を考える過程を、描写してみると、以下のようになります。

コアラ

脳内コアラ No.1

どうしてあの子は、いつもこんなに慌ただしくて、つらそうなお店でずっと働いているのだろうか・・・?
別に、給料が良さそうなワケでもないし。

コアラ

脳内コアラ No.2

ん?この店のスタッフをよく見たら、女性は彼女ひとりだな。
ということは、紅一点だから、男性スタッフや常連客から、看板娘のように扱われ、チヤホヤされる・・・。
だから、長く働いているんじゃないかな・・・?

コアラ

脳内コアラ No.3

いやいや・・・待てよ。
そもそも「忙しくて大変そうな店」という前提が間違っていないか?
脳内コアラNo.1のヤツが勝手に決めたことだし。
もう一度、この前提を疑う方向から考えてみないと・・・。

・・・と、上記のように、答えの無い問題に対し「なぜ」を考えることが「思考する」ということです。
この過程を、世の中のあらゆる答えの無い問題に対し、繰り返すことで、「自分の頭で考える力」がだんだんと鍛えられていきます。

そして、上記「脳内コアラ No.3」のように、自分自身の思考に対して「間違っていないか?」と疑うことで、自らの考えに抜けや甘さが無いか認識できるようになり、考える力はさらに磨き上げられていきます。

「知識の量」が活きてくる場面

ところで、この記事の冒頭で、「知識の多さは、直接的には頭の回転の速さと関係ない」とお伝えしましたが、実は、考える過程と結論をより強固にしてくれるのが「知識の量」です。

いわゆる、頭の回転が速い人は、多くの知識をインプットしている場合が多いので、その知識を使って、思考の過程と結論を、より強固なものにしているんです。

具体的な脳内会話の例を作ってみたので、見てみましょう。

コアラ

脳内コアラ No.1

そうか!僕が、Twitterで色々なことをつぶやいているのは、人に注目されて、実は皆から認められたいからなんだ・・・!

コアラ

脳内コアラ No.2

いやいや、違うよ。絶対にそんなんじゃないよ、決め付けないで下さいよ。
僕はただ、思ったことを淡々と呟いているだけですよ・・・。

コアラ

脳内コアラ No.3

脳内コアラNo.2のやつ、なぜ否定するんだ・・・どう見てもヤツのあのツィートは「かまってちゃん」じゃないか・・・。
そうか、脳内コアラNo.1の主張を認めるということは、「負けを認める」ということになり、結果として「下に見られる」ことになると無意識で思っている・・・。

つまり、下に見られるということは「相手に認められていない」ということ。だから、否定したいんだ。
ん? ということは結局、認められたいからこそ出た発言じゃないか・・・。

コアラ

脳内コアラ No.4

あー・・・そういえば、前に読んだインタフェースデザインの心理学という本に、“自信がない場合ほど、人は強く主張する”結果になった『Gal 2010実験』の話があったな・・・。

この実験のことを鑑みれば、脳内コアラNo.2のヤツがさらに反論してきても、論破できるな・・・。

・・・と、(ここで論破するのが良いかは別として)このように自分の意見に対して、知識やデータで裏付けすることが出来れば、それは「根拠」のひとつとなり、意見の信頼性が補強されることになります。

だから、知識は少ないよりは多い方が、「より信頼できる意見を考えられる」ようになるんですね。
やはり、知識のインプットも大事ですね。

インタフェースデザインの心理学

まとめ

ということで、「頭の回転が速い人」というのは、天性の才能ではなく、「思考した過程」を経験値として大量にもっているから、思考力のパラメータが高いレベルにあり、結果として頭の回転が速くなっているんですね。

その結果、様々な視点からの意見をすばやく考えられるので、「アドリブが利く人」にも見えてしまうんです。

コアラのパラメータ

実はこれこそ前回の記事、「顧客の声は聴きすぎてもダメ?失敗しないためのコンテキスト思考のススメ」で説明した「コンテキスト思考」をするための鍵なんです。

答えのない問題を考えることこそ、コンテキスト思考そのものだったんですね。

では、普段考えることに関しては、斬新で、誰も考えたことが無いような事の方が良いのでしょうか?
私はそうは思いません。

たしかに、斬新でないことは、今やネットで調べれば、誰かが考えた答えが転がっています。
しかし、その答えに辿り着いた過程は、ほとんど書かれていません。

だから、仮に結論がありきたりになったとしても、自分の頭で考えた過程があれば、それは「あなただけの意見」になります。

あぁ、そういえば、以下の「世界のエリートは~的な本」にも書いてありましたし、きっと間違いないですよ・・・ʕ ·ᴥ· ʔ

世の中にありふれた意見であっても、その結論をバックアップする根拠がしっかりしているものであれば、貴重な意見になります。
逆に、斬新な意見であっても根拠が弱ければ、ただの思いつきやデタラメと捉えられます。

世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?(P.64)

世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?

【追記】2015年5月28日
「頭の回転の速さは遺伝によるものであり後天的に作られるものではない」という研究結果も発表されたようです。
しかし、「遺伝子が知能指数に与える影響は50%である」とも書かれております。

【脳科学】勉強してもムダ!?「頭の回転の速さは遺伝(CADM2)で決まっている」