コラム 考えるツボ

「君はどう思う?何か意見はないかな?」

あなたは、会議や打ち合わせの場で、突然こんな風に聞かれ、答えに詰まってしまったことはないでしょうか?

そこで、

コアラ

ちょっと待ってください、今から思考フレームワークを使って考えますので・・・

なんてことをやっていたら、あなたの持ち時間はすぐに終わってしまいます。

本来、効率的に意見やアイデアを考えるための枠組みである「フレームワーク」ですが、とっさの場で使うことは、なかなか難しいと感じています。
(事前に“意見を考えてくるように”と、通知されていれば別ですが)

しかし、実際の会議や打ち合わせの場では上記のように、会話の中で突如、意見やアイデアを求められることが多くあります。

そこで今回は、有名どころの「思考フレームワーク」を紹介するとともに、私がオリジナルで考えた、意見・アイデアを発想する方法をご紹介いたします。
「とっさの状況で使えない」「フレームワーク自体が覚えづらい」という点も解消できるように考えたので、お役に立てば幸いです!

有名どころの思考フレームワーク

オリジナルの思考法を紹介する前に、まず、思考・発想フレームワークの有名どころとして、

  • オズボーンのチェックリスト
  • SCAMPER法
  • 6色ハット発想法

上記3つをそれぞれ、ざっくり紹介していきます。

オズボーンのチェックリスト

オズボーンのチェックリストは、アメリカの広告会社「BBDO」の元会長、アレックス・F・オズボーン氏が考案した、9つのチェックリストに答えることでアイデアを発想する方法です。

オズボーンのチェックリスト

1. 転用(Put to other uses)
他に使い道はないか?
2. 応用(Adapt)
他からアイデアを借りてマネできないか?
3. 変更(Modify)
どこか変えてみたら?
4. 拡大(Magnify)
大きくしてみたら?
5. 縮小(Minify)
小さくしてみたら?
6. 代用(Substitute)
代わりはないか?
7. 置換(Rearrange)
順番とか入れ替えてみたら?
8. 逆転(Reverse)
逆にしてみたら?
9. 結合(Combine)
組み合わせてみたら?

オズボーンのチェックリストを使うことで、多くのアイデアが浮かびそうです。
しかし、9つのチェック項目がなかなか覚えづらいというのも事実ですね。

SCAMPER法

SCAMPER法は、アメリカの研究家ボブ・エバールが、上記のオズボーンのチェックリストを覚えやすいように改良したものです。
7つのチェックリストに当てはめてアイデアを発想する方法で、それぞれの頭文字をとってSCAMPER法といいます。

SCAMPER法

1. Substitute(代用)
別のものに置き換える。
2. Combine(結合)
組み合わせる。
3. Adapt(応用)
応用する。
4. Modify(修正)
修正、変更する。
5. Put other uses(転用)
別の用途に使ってみる。
6. Eliminate(省略・除去)
何かを省いたり、取り除いたりする。
7. Rearrange / Reverse (再調整 / 逆転)
並び替える、逆にする。

オズボーンのチェックリストを改良しただけあって、ところどころ似ています。
しかし、項目数は9つから減ったとはいえ、7つはまだまだ覚えづらい印象です。

6色ハット思考法

アイデア発想法の巨匠といわれるエドワード・デボノ博士が開発した6色ハット思考法は、異なる6つの立場で意見を考え、様々な種類のアイデアを引き出していくという手法です。

6色ハット思考法

1. 白い帽子
客観的な視点を持ち、データや数字から純粋に考えます。
2. 緑の帽子
創造的な視点で考え、自由でぶっとんだアイデアを提案します。
3. 黄色い帽子
肯定的な視点を持ち、全てをポジティブに捉えます。
4. 黒い帽子
否定的な視点で、リスクや懸念点を洗い出し注意を促します。
5. 赤い帽子
理屈も根拠もいりません。本能に従って、直感的・感情的に発言します。
6. 青い帽子
高い視点で物事を見て分析し、管理者的に考えます。

6色ハット思考法は1人で行っても良いのですが、ブレスト(ブレインストーミング)など、複数人でアイデア出しを行う場において活用するのがオススメです。

今の自分の発言が、「どの帽子をかぶった立場からの発言か」が明確になり、かつ様々な視点からの意見を考えられるようになります。

すぐに思い出せる思考フレームワークをつくってみました

上記に挙げた3つのフレームワークは、有名どころだけあって、非常に素晴らしい思考法です。

しかし、冒頭で説明したように実際の会議や打ち合わせの場では、とっさのアイデアを求められる場合も多く、その時に、

コアラ

オズボーンのチェックリストって9つあったけど・・・
「転用」と「応用」と・・・あと7つ、何だっけ・・・?

などと考えているヒマはありません。
(もちろん、使い慣れていて瞬時に思い出せる人もいますが)

そこで、「とっさの状況で使えない」「フレームワーク自体が覚えづらい」という問題を解消できるような、独自のアイデア発想法を考えてみました。
と、いっても完全にオリジナルで作るのは難しいので、以下の3つの書籍からパクり・・・ヒントを得て、作りました。

フレームワークの項目数は「3」がベストかも

「3」という数は、人間が最も覚えやすい魔法の数字であるといわれています。
そこで、思考法の項目を3つに集約することで、「素早く思い出せるようになるのではないか」と考えました。

世の中には三つに分けたものが多い。(中略)
四つや五つや六つのものはなんとなく落ち着かないし、全部覚えるには数が多すぎる。
かといって二つではちょっと物足りない感じになる。

ビジネスは30秒で話せ!短く、魅力的に伝えるプレゼンの技術

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3つの軸で考える

項目の数を「3」という覚えやすい数字に決めたところ、以下の書籍では「時間軸・空間軸・人の軸」という3軸による考え方を推奨していました。

時間軸・空間軸・人の軸

ななめ上へと伸びた線が、過去→現在→未来へとつづく「時間軸」。
楕円は、身の回り→日本社会→世界へと広がる「空間軸」。
そして中央の人型は、自分とは?人間とは?を掘り下げる、「人の軸」だ。

あなたの話はなぜ「通じない」のか(P.68)

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

これを参考に、

  1. 立場(様々な立場から考える)
  2. 範囲(小さな範囲、または大きな範囲で考える)
  3. 時間(座標を変えて、過去・現在・未来で考える)

という3つの軸で考えることにしました。

覚えやすい名称を考える

3つの項目(軸)は決まりましたが、「立場・範囲・時間」法では「覚えづらいな・・・」と思い、もう少し統一された名称にできないか考えていたところ、以下の書籍が参考になったので、拝借することにしました。

「もっと高い視点、広い視野、深い視座を持ちましょうよ」と語りかけるわけだ。

話の流れを一気に変える!コンサルタントの「ひと言」力(P.74)

話の流れを一気に変える!コンサルタントの「ひと言」力

書籍で語られていた、「視点・視野・視座」の言葉の意味とは異なりますが、名称としては覚えやすくなったと思います。

  1. 視点(様々な立場から考える)
  2. 視野(小さな範囲、または大きな範囲で考える)
  3. 視座(座標を変えて、過去・現在・未来で考える)

オリジナル思考フレームワーク「視点・視野・視座法」

ということで完成した、このオリジナル思考フレームワーク「視点・視野・視座法」ですが、具体的な使用例とともに、詳しく説明すると以下のようになります。

1.視点(相手の立場、第三者の立場で考えてみる)

視点で考える

主観ではコアラに見える生物も、別の人にはネズミに見えているようです。
しかし、コアラは自分のことを別の生き物だと思っているかもしれません。
このように、様々な視点で考えることにより、物事の見え方が変わってくることがあります。

2.視野(視野を広く、または狭くして考えてみる)

視野で考える

コアラを狭い範囲で見てみると、ノミが付いていました。
逆に少し引いて、広い範囲で見ると、お腹に子供コアラを抱えていました。
これは例えば、問題に直面した時などに、問題を小さく分解して考えたり、逆に全体を俯瞰して考えるといったことにも該当します。

3.視座(現時点の状態だけでなく、過去や未来の状態も考えてみる)

視座で考える

コアラの祖先は「ディプロトドン」という有袋類だったといわれています。
さらに、将来的にはド○ラに進化していくのかもしれません。
これは、過去の状態や将来の状態を予測した上で物事を考えるということになります。

※ディプロトドンの画像は、戦え絶滅動物のサイトからお借りしました。

この「視点・視野・視座法」は、生物や物体に対してだけでなく、課題などの情報に対しても使うことができるので、ぜひ試してみてください。

3軸すべて思いつかずとも、どれかひとつの軸について考え意見が浮かび、発言できるようになるだけでも、ずいぶん違ってくると思います。

エピソード記憶と連想記憶で覚えやすくする

最後に、「視点・視野・視座法」の、“内容”の思い出し方を紹介します。
“名称”が覚えやすくても、フレームワークの“内容”そのものを忘れてしまっては、意味がありません。

そこで、「体験や感情を伴うと忘れにくくなるというエピソード記憶」「“似たもの”で思い浮かべる連想記憶」を使うことで、視点・視野・視座法をより強固に覚えてしまおうと考えました。

そんな中、目にとまったのが、ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ
そのアニメに登場する占い師「モハメド・アブドゥル」が、前後・上下・左右の各方向にある生命反応を探知するという小技「炎の生物探知機」を使っていました。

炎のアイデア探知機

これなら、見た目は3軸になっており連想しやすく、また、このワザを使ったにもかかわらず、仲間をかばって無残なやられ方をしてしまったアブドゥルに対する悲しみが、感情を伴うエピソード記憶となっており、思い出しやすくなります。

え・・・アブドゥルを知らない!?ʕ ·ᴥ· ʔ

であれば、ジョジョの奇妙な冒険の26巻を読んでおけば大丈夫です。
ともかく、奇妙な・・・実に奇妙なたとえですが、この「視点・視野・視座」の別名は「炎のアイデア探知機」に決定しました。

炎のアイデア探知機

  • 探知機の「前後」は、視点をあらわす。
  • 探知機の「左右」は、視野をあらわす。
  • 探知機の「上下」は、現在・未来をあらわす。

まとめ

ということで、会議や打ち合わせの場など、とっさの状況で使えない思考フレームワークも、思い出しやすいよう独自のものを作っておけば、意見やアイデアを素早く考え、発言できるようになります。

もちろん、3軸で考えるだけでは足りない時もあるので、有名どころのフレームワークも使えるに越したことはありません。
前回の記事、頭の回転が速く、アドリブが利く人って天性の才能なの?に書いたように、普段から「考えるトレーニング」をしておくことで、あらゆるフレームワークを素早く使えるようになっていくと思います。

では、さっそく試しに、視点・視野・視座法(炎のアイデア探知機)の思考フレームワークを使って、あなたが今この記事を見るのに使っている「」のことを3軸で考えてみると・・・