「え? 私、そんなこと言ったっけ?」
─── と、あなたが言った覚えがないことが、まるであなたの発言であるかのように語られている。
もし、そんな経験があるのならば、あなたはすでに成功者への一歩を踏み出している可能性があります。
ということで、今回は「俺、そんなこと言ってねえんだけど現象」の原因と本質を、アインシュタインの名言から紐解いてみたいと思います。
何故か言ってないことが言ったことになっていたり、発言の一部を切り取られていたり、拡大解釈されて揚げ足をとられたり・・・。
少なからずそんな経験をしたことがある人であれば、この記事の内容に勇気づけられるかもしれません。
※あなたが学んだ「チョットデキル」を発信する Advent Calendar 2019の記事として書きました。
─── MMR(マーケティングミステリー調査班)のとある日。
あらすじとしては、原因不明の人類石化現象で現代人がほぼいなくなり、完全に文明を失ってしまう。
しかし約3,700年後、石化から復活した科学オタクの主人公が、文明が失われた世界で、科学を使って世界をイチから発展させていく、週刊少年ジャンプ原作の人気のアニメですよね〜。
彼らは、某組織に所属するマーケティングミステリー調査班、通称MMR。
MMRは、この世の中にある“成功している企業のマーケティングの不思議”を調査・解明するのが主な仕事・・・という設定ではじめたのだが、最近は好奇心の赴くまま「読みたいことを、書けばいい」という感じのコラムになりつつある。
カモノハシ
自己啓発本や自己啓発セミナーが三度の飯より好きな、天然ポジティブ思考タイプ。
毎月溜まっていく積ん読本は平均10冊、意識の高い哺乳類。コアラ先輩の会社が制作したツールのイメージキャラクターをやっている。
コアラ先輩
カモノハシの先輩で理屈屋。
最近、仏頂面と言われたのを気にしてこっそり笑顔の練習をしている。日課は糖質制限と筋トレ。
今年、副業していた組織を法人化。
やっぱ、アインシュタインのような天才成功者は、常識にとらわれない発想をしてたんですかね〜。
その中に、アインシュタインの以下の一説があったんですよね。
凄いよなぁー。
アインシュタインも、こう言っている。『もし自分が殺されそうになって、助かる方法を考えるのに一時間だけ与えられたとしたら、最初の五五分は適切な質問を探すのに費やすだろう』って。
ふーん。
…でもまぁ、科学は再現性が大事、つまりは論理の積み重ねで、いわゆる天才的・非常識な発想はそこまで重要ではないんじゃないかな。
話は変わるが、アインシュタインがこんなことをいっている。
「私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」
・・・ん?
なんか似たような内容だけど、書いてあること微妙にちがいますね。
- もし自分が殺されそうになって、助かる方法を考えるのに一時間だけ与えられたとしたら、最初の五五分は適切な質問を探すのに費やすだろう
- 私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう
・・・本当だ。
とくに時間(分数)はどっちなんだろ・・・。
これはちょっと気になるね、調べてみようか。
というワケで、改めましてこんにちは。
(冒頭からの茶番にお付き合いいただきありがとうございます)
今回は、私とカモノハシ君の2人が見つけてしまった“アインシュタインの名言”の矛盾から、「俺、そんなこと言ってねえんだけど問題」が発生する原因と、その本質にせまってみたいと思います。
先ほど紹介したアインシュタインの名言に関して、ジョンズ・ホプキンズ大学のコンピューター科学者、グレゴリーFサリバン博士が運営する「Quote Investigator(※)」を調べてみると、実はそもそも「アインシュタインが、1時間のうち5十何分間問題定義に使う」と言った証拠はないことが判明しました。
(※「Quote Investigator」は、広く知られている名言や引用の起源を事実確認するサイト)
このアインシュタインの名言(とされるもの)は、どうやら世界でも同じように、下記いくつかのパターンで広まってるようです。
- 仮定の事象が「世界を救う」or「自分の命を救う」or「問題を解決する」
- 時間配分が「50分を問題定義に使う」or「59分を問題定義に使う」or「その他派生形」
以下に「Quote Investigator」に記載があった、アインシュタインが言ったとされるパターンを紹介します。
(※日本語訳は私が勝手につけました)
If I had only one hour to save the world, I would spend fifty-five minutes defining the problem, and only five minutes finding the solution.
(訳)もし世界を救うのに1時間しかなかったら、問題定義するのに55分、解決策を見つけるのに5分を費やすだろう。
If I had an hour to solve a problem I’d spend 55 minutes thinking about the problem and 5 minutes thinking about solutions.
(訳)問題を解決するために1時間あったら、問題を考えるのに55分、解決策を考えるのに5分を費やすだろう。
Given one hour to save the planet, I would spend 59 minutes understanding the problem and one minute resolving it.
(訳)地球を救うのに1時間与えられたら、59分間で問題を理解し、1分間で解決する。また、インドの科学雑誌「Invention Intelligence」の記事では、以下のように3つの時間に分割したバージョンも生まれたようです。
If I were given an hour in which to do a problem upon which my life depended, I would spend 40 minutes studying it, 15 minutes reviewing it and 5 minutes solving it.
(訳)自分の命がかかった問題を解く時間を1時間与えられたら、問題を調査するのに40分、チェックするのに15分、解決するのに5分を費やすだろう。上記の言葉たちが、いつどこで用いられ始めたかの詳細は「Quote Investigator」を参照いただければと思いますが、アインシュタインがこれら「いずれかの発言をした」という確固たる証拠はありませんでした。
(アインシュタインの生涯と実績を記した、プリンストン大学出版局のThe Ultimate Quotable Einsteinにも記載なし)ふ〜ん。
発言の証拠となる最初の資料でも、アインシュタインでなくイェール大学の教授の発言なんですね。
しかも、その教授の名前は分からないという。・・・みたいだね。
まあ、この名言(とされるもの)をみるに、「問題解決にはいわゆるイシュー・ボトルネック(※)の見極めが肝心だよ」と、言いたいことは分かる。(※根本的原因・真因とかそんな感じのこと)なので、常に時間に追われているような学者や研究者にとっては金言のように感じられて、広まりやすかったのかもしれないね。
まあ・・・よくよく考えればこの手の、昔の「有名な人が言っていた」は、枚挙にいとまが無いよね。例えば、経済学の書「雇用・利子および貨幣の一般理論」の著者ケインズや、「資本論」の著者マルクス。
どちらも「世界を変えた」と言われる本を出版したカリスマ経済学者ですが、彼らに関して、以下のような一説があります。
彼(ケインズ)の理論は、とりわけ若い世代の経済学者の心を捉え、熱烈な信奉者が急増。先にも述べたように、彼らはケインジアンと呼ばれました。
しかし、ケインジアンの理論は、やがて独自の発展を遂げます。どうもケインズ本人の意向とは異なる思考も増えたようで、ケインズがアメリカでケインジアンたちに会った後、「きょうの会合でケインジアンでなかったのは私ひとりだった」と言ったエピソードがあります。
かつてカール・マルクスも、「私はマルクス主義者ではない」と発言したことがあります。
どうもカリスマ学者は、亜流を大勢作り出してしまうようです。つまり・・・亜流があらわれたり、当の本人が言ってもいないことがまことしやかにささやかれ始めた時こそ、その人が本物のカリスマ的存在になった証なのかもしれない・・・。なるほど・・・。
あ、現代のTwitterでも、こんな ケースがありましたよ。
先週の1本目のセミナーのフィードバックを頂いて読んでるんだけど、「汗をかきなさい、というフレーズが非常に刺さりました!」というコメントが書いてあって満点評価なんだが、どこをどう見返しても「汗をかきなさい」とは僕は一言も言ってないはずなんだよなw
— sem_master (@semlabo) 2016年3月21日
これは、東京のとあるWeb広告運用会社の社長のつぶやき・・・。
このツイートは2016年のものだけど、当時の時点で健全過ぎるこの業績。
まさにカリスマ経営者たる証なのでは…。
現在従業員数が約30名で、売上15億円超えるくらいの優良企業。業績だけ見れば普通に上場できるレベルですね。
まさしく「俺そんなこと言ってねえんだけど」現象の本質をここに垣間見ました・・・!
おわりに
あなたにも、「そんなこと言ったっけ?」と思うことや、伝えたはずのものとは異なった内容で広まった発言はなかったでしょうか?
もし、そんな状況が見え隠れし始めていたとしたら、あなたはすでに「成功者・カリスマ」と言われる領域に、足を踏み入れているのかもしれませんよ。
今回 コアラ先輩が調査に使った書籍
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