あなたの会社では、優秀な人ばかりに仕事が集中していないでしょうか?
(もしかしたら、その「優秀な人」はあなたかもしれませんが・・・)

組織というのは本来、効率的に生産性を上げるために人を集めたもの。

もし、特定の人ばかりに意図せず仕事が集中しているとしたら、それは組織としては本末転倒といえます。

仮にそんな状況になっている場合は、いち早くその状況を解決しなければなりません。
その解決のための考え方のひとつに、イギリスの経済学者デヴィッド・リカードが唱えた「比較優位論」というものがあります。

リカードの経済学〈上〉

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「比較優位論」は国際貿易に関する理論で、カンタンにいえば「分業を行なった方が全体的な生産性が上がる」というもの。
別の言葉で言い換えれば「適時・適材・適所」といったところでしょうか。

この記事では、そんな比較優位論の考え方を「仕事の分担」の例を使って分かりやすく紹介します。

「ウチの職場で優秀な人にばかり仕事が集中して困っている・・・!」と感じている方にとって、問題解決のためのヒントになれば幸いです。

デキる人が絶対優位なのは当たり前。大切なのは個々人にとって何が優位なのか

「比較優位」の考え方は、それぞれがより相対的に得意なことを行い、全体にとっての生産性を高めるべきというもの。

例えば、まったく同じクオリティの成果物を出すのに、以下の時間が必要と仮定します。


  • Aさんはデザイン1回に10時間が必要で、プログラミング1回に8時間が必要
  • Bさんはデザイン1回に8時間が必要で、プログラミング1回に4時間が必要

比較優位 例1

AさんとBさんを単純比較すると、デザインもプログラミングもBさんの方が少ない時間で行え、効率が良いので「Bさんは絶対優位」にあるといいます。

しかし、もしこの絶対優位の考えで「Aさんはどちらを行なっても効率が悪いだけなので、どちらもさせない」という結論になってしまうと、Aさんの生産性は0になってしまい、全体としては労働力が無駄になってしまいます。

絶対的な時間で比較するのではなく、割合で比較する

ということで、全体として労働力を無駄にせず生産を最大化するため、比較優位による考え方を用います。

ここで、単純に時間を見て考えてしまうと「AさんもBさんもプログラミングの方が少ない時間で出来るし、どちらもプログラミングが得意なのでは?」と、考えてしまいます。

しかし、二人がプログラミングしか行わないのであればデザインをする人がいなくなってしまい、必要な仕事が達成できません。

では、どちらがデザインを行ったらいいのでしょうか?

絶対的な時間ではなく、以下の様に「倍率」で考えてみると、どちらがデザインをすべきかが見えてきます。

デザインがプログラミングに対して

上記は、「プログラミングの時間はデザインの時間に対して何倍必要か?」を表したもので、Bさんはプログラミングに比較優位があることが分かります。

まだ少し分かりづらい印象であれば、逆に計算してみます。

プログラムがデザインに対して

「デザインの時間はプログラミングの時間に対して何倍必要か?」で見ると、Aさんは「Bさんと比較してデザインの方が少ない割合で出来る」ということになります。

つまり、Aさんはデザイン、Bさんはプログラミングを行う。
これで労働力が無駄にならず、組織全体として生産を最大化することができます。

※もちろん下記のように、単純にAさんとBさんがそれぞれの業務を行った場合の合計時間を見て、少ない時間で済む「1.」で仕事を割り当てると考えても結果は同じです。


  1. Aさんデザイン(10時間)+Bさんプログラミング(4時間)= 合計時間14時間
  2. Aさんプログラミング(8時間)+Bさんデザイン(8時間)= 合計時間16時間

「比較優位」は「出来る事しかやらせない」ではない

あまりあって欲しくない話ですが、「比較優位」を誤ってとらえると、各メンバーが出来る「カンタンなことしかやらせない」という考え方も起こりえます。

しかし、そうではなく「比較優位」はあくまでそれぞれが「現時点で」得意なことを行い、生産性を最大化させるというもの。

決して組織の成長を停滞をさせるためのものではないので、そのような捉え方をしないように注意しましょう。


今回は、優秀な人に仕事を集中させず、組織の生産性を最大化するための「比較優位」の考え方を紹介しました。

ちなみに、最後にお伝えした通り「比較優位」で生産性を最大化しつつも、個人の得意を伸ばし、弱点は克服していくことが組織にとっては最も望ましい形です。

組織と個人の成長について確かな学びを得たい場合は、以下の書籍をオススメします。
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