─── 賢者が愚者から学ぶことの方が、愚者が賢者から学ぶことよりも多い。
そう語ったのはルネサンスの巨匠、フランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュ。
「自分の無知を認識できる人間は、あらゆるものから学びを得ることができる」
モンテーニュはそんなことを言いたいんじゃないかと思いつつ、この言葉から私が得た気付きは、「謙虚でさえいれば赤ん坊からでも学ぶことはある」というものです。
自称コアラ界の巨匠、コアラ・ド・モンテーニュです。
今回は、私が「赤ん坊の3つの特徴」から導きだした「職場の大人相手にも役立つコミュニケーションの考え3つ」を、お届けしたいと思います。
(ここでの「赤ん坊」の定義は3歳児ぐらいまで)
まぁまぁ真面目に根拠・参考書籍も並べましたので、何かひとつでも、仕事でのコミュニケーション改善・向上などのヒントになれば幸いです。
※あなたが学んだ「チョットデキル」を発信する Advent Calendar 2019の記事として書きました。
1. お腹が空いている時にネガティブな報告は避ける、怒りが衝動的に爆発しやすいから
赤ん坊は、お腹が空いている時は機嫌が悪いです。
「・・・それ赤ん坊なら当たり前のことじゃないか」と思うでしょうが、実は大人でも、同じことが言えます。
赤ん坊の場合、「自らの力で食事にありつけない」ということを考えれば、空腹は生命の危機。
いかなる手段を使ってもその危機は、回避する必要があります。
そして、もしいつまでも空腹が回避されなければ、涙は激流となり、わめきは叫びとなり、モノをなげつけるなど破壊的な行動へと至ります。
これは、原始の時代より「ヒト」の生存本能として備わったもの。
食料が乏しかった原始の時代では、自分の食欲や衝動に従って行動したほうが生き残れる可能性が高まります。
当然、この生存本能は大人になって成長しても完全に消え去ることはないワケです。
例えば、上司にネガティブな報告や顧客に謝罪をするなら、「お昼ご飯前は避ける」というのを聞いたことはありませんか?
前述の通り、空腹である時間帯は生存本能により他人を許す寛大な心よりも、怒りが衝動的に爆発する可能性が高い時間帯です。
下記のように多くの書籍でも、この本能の名残の危険性を訴え、可能な限り避けるべきものであると助言しています。
現代人も空腹のときには危険を冒す傾向があります。(中略)
脳の優先事項はとにかくエネルギーを補給することになってしまい、長期的な目標に基づいてよりよい決断をするどころではなくなってしまいます。
出来れば、プロのビジネスパーソンたるものいかなる時も冷静かつ聡明な判断をして欲しいものです。
しかし、「本能だから仕方ない」と割り切り、余計なトラブルを回避することもまた、スマートに事を運ぶプロの鉄則かもしれません。
2. 睡眠不足の時は感情のコントロールも、賢明な判断もできない
先ほど、赤ん坊は空腹の時に泣くとお伝えしましたが、なんと眠い時にも泣くのです。
(眠いのなら睡魔に身をゆだねて、静かに眠ればいいものを)
残念ながら赤ん坊は、睡魔が「眠ることで解消できるもの」であることをまだ理解できていないのです。
そして、うまく眠れなければ機嫌は悪くなり、泣き続けてしまいます。
このように、眠い時は感情のコントロールが難しくなり、集中することや物事に取りかかろうという気持ちを沸き起こすのも難しくなります。
大人の場合、「休日の朝、まだ眠っていたい時に起こされて不機嫌になる人」を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。
ただ、「夜遅くまで酒をあおってしまった翌日」や、「徹夜した翌日」が休日ではなく平日だと、それはもう悲劇となります。
仕事中、ハッキリしない頭、浮かばないアイデア、上がらない生産性・・・。
そんな状態で、例えば、重要な意思決定を行う会議があるとしましょう。
なんと、「睡眠不足の時に決断した重要なこと」は、「お酒の席での約束事」と同じくらい信用ならないものになることが、以下のように書かれています。
研究によれば、睡眠不足が脳に与える影響は、軽度の酩酊状態と同じであることがわかりました。
これでは、自己コントロールなどとうてい望めません。
もし、あなたの上司が明らかに寝ぼけ顔で社内をうろついていたなら、あなたが伝えるべきことは良い報告でも悪い報告でもなく、とにかく「寝てもらうこと」になるかもしれません。
3. 笑いは伝染する。しかめっ面の人にはこちらから笑顔、笑うから楽しい
最後の3つ目は、機嫌が悪い状態を避けるのではなく、良くする方法をお伝えしましょう。
赤ん坊というのは、こちらが笑顔になると、基本的に笑い返すことが多いです。
(もちろん、前述の空腹時や眠い時などは除いて)
笑顔が伝染する理由には、ミラーニューロン(※)の存在によるところが大きいと言われていますが、ここで強調したいのは「笑うから楽しい」ということ。
(※ミラーニューロンは、他人の行動をみて自分が同じ行動をとっている時のような反応をする神経細胞の名称)
一般的には「楽しいから笑う」と思われていますが、実は逆の「笑顔になるから楽しい」ということも分かっています。
笑顔が楽しさを引き起こす・・・つまり笑顔が感情に与える影響については、様々な研究や仮説が打ち立てられているので、いくつか紹介しておきます。
【ディンバーグの研究】 無意識に同じ表情パターンをつくりだし、感情を共有する
生理心理学者のディンバーグは、第三者の喜びや怒りの表情をビデオに写して、その表情を見ているとき、その見ている本人はどのような表情をするのか調べようとしたのである。
その結果、被験者は自分が見ている表情と同じパターンの表情筋の筋放電を、意識しないで生じさせていることがわかった。
すなわち、相手が笑っていればそれを見ている方も自動的に笑いの表情パターンをつくりだしてしまうということである。もし自然に相手と同じ表情をつくってしまうとしたら、その表情を構成する表情筋のフィードバックや血液温度の変化などによって、自らも相手と同様な感情経験ができる。
人が喜んだり、微笑んだりしているのを見ると自分までうれしくなってしまうのには、このような背景があると考えられる。
【ジェームズ=ランゲ説】 笑うからうれしい
この理論を一言で説明すると、「人はうれしいから笑うのではなく、笑うからうれしい」ということになる。
つまり、笑いにともなって生じる身体的・内臓的活動が、その活動パターン応じた感情経験をひきおこすという考え方である。
【顔面フィードバック仮説】 笑うとおかしく感じる
アメリカの心理学者トムキンスは、大脳皮質下に生まれながらにそなわった感情のプログラムがあるという仮説を発表した。
刺激をうけると、このプログラムにしたがっておもに顔面の筋肉などの活動がひきおこされ、感情に対応した表情が表出される。つまり、喜びの感情プログラムが作動したなら、笑いなどの表情の動きが顔面にあらわれ、その筋の活動パターンが中枢にフィードバックされ、喜びという感情を経験するというのである。
・・・と、これらの研究や仮説のように、顔の筋肉の動きにより「嬉しい」「楽しい」という感情が発生・伝染することが確認されています。
であれば、例えばもしあなたが、面白くないと感じる仕事でモチベーションがあがらなかったり、いつもしかめっ面で楽しくなさそうな同様がいたりするなら、笑顔になってみるというのも手かもしれません。
たとえそれが、作り笑顔だったとしても、前述の「顔面フィードバック仮説」等を鑑みれば、嬉しさ・楽しさという感情が湧き上がり、モチベーションアップに繋がることでしょう。
このことから、姿勢や表情というのは、気分・感情に密接に紐付いているんだなあと感じます。
そうそう、冒頭でセリフを引用したモンテーニュと同じフランスの哲学者アランも、著書の幸福論の中で、以下のように述べていますよ。
幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ。
以上、「赤ん坊の特徴」から導きだした「職場の大人相手にも役立つコミュニケーション3つの考え」をお届けしました。
あなたの仕事やプライベートにおける人とのコミュニケーションにおいて、何かしらの参考になったのであれば幸いです。
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