時に、対立した概念のように使われる「中小企業」「大企業」という言葉。

多くの人は、それぞれの言葉に対してなんとなく「十数人以下の会社」「上場している会社」という感じで捉えられているかもしれません。

しかし実は、「中小企業」という言葉には、中小企業基本法により定められた明確な定義があります。

対して、「大企業」という言葉には、法で定められた明確な定義はありません。

・・・が、似たような言葉で「大会社」という言葉の定義は存在しますので、中小企業と大会社の定義を、この記事で合わせて紹介します。

ちなみに、中小企業の中でも、さらに人数や売上規模の小さい会社は一般的に「零細企業」という言葉を使われることもあります。

この「零細企業」という言葉の定義も無いのですが、「小規模企業者」という言葉はありますので、これも一緒に説明します。

中小企業基本法による「中小企業」の定義

以下の表の通り、業種別に資本金、または従業員数(常時雇用する労働者の数)のどちらか一方を満たす会社は「中小企業」に定義されます。

業種 資本金 従業員数 小規模企業者
となる人数
製造業、建設業、運輸業 3億円以下 300人以下 20人以下
卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下 5人以下
小売業(飲食店含む) 5,000万円以下 50人以下 5人以下
※「小規模企業者」とは、常時使用する従業員の数が20人以下の事業者のことをいいます。
ただし、商業(卸売業、飲食店含む小売業)、もしくはサービス業に属する事業が主要事業の会社の場合は、常時使用する従業員の数が5人以下。

株式会社の分類の中で「大会社」は定義されている

冒頭で、「大企業」という言葉の定義はないことをお伝えしました。
しかし、似たような言葉で「大会社」という言葉が、株式会社の分類の中で定義されています。

「大会社」の定義

以下のどちらかを満たす会社は大会社に分類されます。

  • 最終事業年度の貸借対照表に、資本金として計上した額が5億円以上
  • 最終事業年度の貸借対照表の、負債の部に計上した合計額が200億円以上

「非大会社」の定義

大会社以外、つまり以下の両方を満たす会社は、非大会社です。
(中小企業はほぼ非大会社に当てはまることになります)

  • 最終事業年度の貸借対照表に、資本金として計上した額が5億円未満
  • 最終事業年度の貸借対照表の、負債の部に計上した合計額が200億円未満

なお株式会社は、売上規模以外の「株式を誰でも取得できるかどうか」の違いでも、以下のように分類されています。

公開会社
自由に譲渡できる株式を一部でも発行している会社。
(発行する株式の取得について、株式会社の承認を要する定款を設けていない株式会社)
非公開会社
当該会社の株式を取得するのに、必ず会社の承認が必要になる会社。
譲渡制限会社や閉鎖会社ともいわれる。
(発行する全部の株式の内容に、譲渡による当該株式の取得について、株式会社の承認を要する定款を設けている株式会社)

「株式を誰でも取得できるかどうか」の違いは、会社の資本や負債とは関係ないので、「大会社で非公開会社」というのももちろんあり得ます。


おわりに

当記事では、「中小企業」や「大会社」の定義をざっくりとお伝えしました。

ではなぜ、このように「中小企業」や「大会社」を明確に定義し、分類する必要があるのでしょうか?

それは、一般的に規模の小さい企業は大きな企業に比べて、(労働生産性が低い等の)問題を有していることが多いためです。

そのような問題は、国を含めて政策的に解決する必要があるので、中小企業の範囲を明確にしておく必要があるんですね。

逆に、会社規模が大きい場合は、社会的影響力が大きいため、ガバナンス(※1)の強化・バランスをとる必要があります。
そのため、こちらも同様に定義を明確にして、機関(※2)設計等を義務づける必要があるんですね。

(※1)ワンマン経営等による、業績悪化や不祥事を防ぐ仕組み。企業統治と訳されることも。
(※2)会社の意思決定・経営を行う組織、およびその役割を担う立場にある人。

参考サイト